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話題の甲州弁は独特なフレーズが多い?
甲州弁は、ドラマや映画でよく使われる、山梨県北部の方言です。標準語とはまったく異なった独特なフレーズは、特に女の子が使うととてもかわいいと大人気の方言です。語尾がかわいく、女の子が「ほうずら」(そうだよ)と言うと、意外なキュートさにかわいさが倍増します。
方言は「年配の人が使っている」というイメージが強いものですが、甲州弁は若者も使っています。「ほうずら」や「~だんべ」という表現には、柔らかみも感じられます。甲州弁は大変独特なので、東部が東京であるにも関わらず、意味が理解できない方言でもあります。
甲州弁とは?
甲州弁は朝の連続テレビ小説『花子とアン』でも登場しました。モンゴメリ作『赤毛のアン』を翻訳し、『赤毛のアン』を日本に初めて紹介した村岡花子さんが主人公でした。村岡花子さんは山梨県甲府市甲州の出身です。このドラマで「甲州弁はかわいい」と話題になりました。
甲州は、7世紀から東海道に位置した「甲斐国(かいこく)」が名前の源です。富士山を仰ぐ甲斐の国は、江戸時代には「甲府藩」となり甲州街道が整備されました。長い歴史の流れの中で静岡と長野の影響を受け、甲州弁が自然と成り立ちました。
山梨県で話される方言
山梨県といえば、甲州弁というほど、甲州弁は「山梨で使われている方言だ」との認識が日本人の間には広まっています。ほぼ右側が東京都であっても、山梨県は長野県と静岡県の間にある場所としてとらえる方が正しいでしょう。
そこで、「行くずら」(行くよ)や「いいさよぉ」(いいよねえ)といった、長野県と静岡県によく似た方言が甲州弁となりました。「だっぺ言葉」と呼ばれる語尾の「~だんべ」も甲州弁ですが、「~だんべ」は茨城県でも使われています。甲州弁は、静岡県や茨城県の方言とも共通点があります。
西側の東海東山方言と東側の郡内弁に分かれる
甲州弁は、富士山北麓の「御坂山地(みさかさんち)」及び日本百名山のひとつ「大菩薩嶺(だいぼさつれい)」を境に東西で方言が分かれます。西側は「国中(くになか)地方」と呼ばれ、甲州弁でも「東海東山方言」と呼ばれます。
一方、東側の郡内(ぐんない)地方では、甲州弁は「郡内弁」と呼ばれます。二種類の甲州弁を分けるポイントは、意志・推量を表す表現です。長野県と静岡県に挟まれた「東海東山方言」は「ナヤシ方言」と呼ばれ、「ず」「ずら」が意志や推量の甲州弁です。
「郡内弁」と呼ばれる甲州弁では、意志や推量を表現するのに、「べー」や「だんべー」を語尾に付けます。そこで、甲州弁は、東海東山方言では「行こう」の表現には「行くずら」と言い、郡内弁では「行くべー」といった違いが生まれます。
「田舎臭い方言」と言われる話題の甲州弁ですが、山梨の女の子が東京の男子と仲良くなって、「ほら行くべー」や、「シネマ行くずら」と言うと、かわいいと思われることも多いのです。方言は、標準語のスマートさがないだけに、基本的に「かわいい」表現が多いものです。
日本一汚いと言われたことも
テレビドラマにも取り上げられ、かわいい方言と話題になる甲州弁ですが、実は甲州弁を聞いて「汚い」と感じる人もいます。「甲州弁は日本一汚い方言」とまで言われたこともあります。甲州弁はあるバラエティ番組で「ブサイク方言ランキング第1位」となりました。
甲州弁は若い人も使う方言です。例えば、甲州弁には「最下位」を意味する「げっぴ」という方言があります。「げっぴ」を聞いて「げっぷなのか、お腹が緩いのか」と間違えます。そこで、「なんとなく汚い」と甲州弁を思う人が多いようですが、全体的に甲州弁はかわいい方言なのです。
甲州弁の特徴
甲州弁にはさまざまな特徴があります。甲州弁の語尾は「ずら」や「だんべー」など、かなりインパクトが強い表現が多いのです。また、アクセントはほぼ標準語と同じですが、「山梨」という時は「ヤまなし」と最初にアクセントが来るといった傾向があります。
甲州弁には「そう」が「ほう」になるなどのかわいい表現があります。「そして」は「ほして」となり、柔らかい印象が甲州弁にはありますが、表現によっては「来て」を「こう」「こうし」と言います。こんな点で甲州弁は「怖い」とも言われてしまいます。
語頭のアクセントが強い
山梨県内でも、一番話題になるのが甲州弁です。甲州弁は、先ほどご紹介したように、東海東山方言とも呼ばれる、西側の「国中(くになか)弁」と、東側の西関東方言に属する「郡内(ぐんない)弁」とに分かれます。山梨県中心部は甲府盆地ですが、国中弁は甲府盆地の西側です。
郡内弁は、富士五湖地方周辺の方言で、より東京寄りの東側で話されています。同じ甲州弁であっても、国中弁のほうが郡内弁よりも東京より離れています。そこで、お互いに表現が通じにくいのです。
また、甲州弁の特徴として、語頭にアクセントが付く点が話題になりますが、国中弁のほうが発音の仕方がより強く、けんか腰に聞こえます。そこで、国中弁の人はキツイなあという印象を同じ山梨県内の人にも与えます。
人名でも頭にアクセントが付く
甲州弁では、物の名前や形容詞でも語頭にアクセントが付きます。「どおご」(道具)では「ど」、「ほーずら」(そうだよ)では「ほ」を強く発音します。これと同様、人の名前にも語頭にアクセントが付くことで話題になります。
例えば「おら田中ちゃんの親友っつーこんずら」(私は田中ちゃんの親友っていうことね)では、「タなかちゃん」と人名の最初を強調します。また「おまん、ちっとこけえこうし!」(お前ちょっとこっち来い!)では単語の語頭を強く言うため、ケンカかと誤解されます。
風に声がかき消されないため
山梨県は、周囲が山に囲まれています。特に甲府は盆地であり、東は標高2057mの大菩薩嶺、北には標高2475mの甲武信ヶ岳がそびえ立ちます。西は標高1704mの茅ヶ岳、南は富士山景勝地のひとつ川口湖北の御坂峠です。
川も流れず、山に囲まれた地方である甲州は、山々から非常に強い風が吹きます。山の風は「ゴーッ」と唸るような音ですので、人の声が聴こえません。そこで、甲州では会話の際、相手に声が聴こえるように、語頭に強いアクセントが付くようになりました。
標準語が別の意味に
甲州弁は、同じ山梨県内の人でも話題にのぼり、「甲州ではみんなケンカしているみたい」と言われてしまいますが、実際甲州の人々は、甲州弁を「温かく大事にしたい」と思っています。「汚い」と汚名を被る甲州弁ですが、意味を解説されると意外とかわいいと感じるものです。
甲州弁では「標準語が話されている」との印象を受ける場合があります。それは「えらい」「かじる」「とぶ」などの標準語を使うためです。しかし、意味を解説されると、「えらい」は甲州弁で「疲れた」です。「かじる」は「痒い所を掻く」、「とぶ」は「走る」となります。
東京は地方出身者が人口の約半数を占めます。そこで、山梨出身の女子大生が、友達と急な坂道を急いで駆け上がった時に「ああ、えらい」(ああ、疲れた)と言うと、東京の友人から「誰が偉いの?」と訊かれてしまいます。
また東京の大学に入った山梨の男子は、語尾に時折「~ずら」が付くため、周囲から「地方の人だな」と理解されます。しかし、とても疲れた時、「えらいえらい」と連呼し過ぎた場合、周囲から「お前、自分のこと褒め過ぎ」と言われてしまうのです。
また標準語と同じ「からかう」という言葉を甲州でも使いますが、標準語では「冗談で人を馬鹿にする」といったマイナスイメージがあります。甲州弁の「からかう」は「手を尽くす、試してみる」というプラスの意味です。
「おんのパソコンいごかんくけんど、おまん直せるけ?」「ほんじゃあ、おらんがからかってやるずら」とは「俺のパソコン、動かないけれど、お前直せる?」「それじゃ、俺がなんとか修理してみるよ」という意味です。
甲州出身の人が東京で「俺がからかってやっから!」と言うと、「馬鹿にするな!」と勘違いされてしまいます。同じ日本人同士でも、方言によって、こんなにも意味内容が逆になるとは驚きです。
甲州弁の語尾
甲州弁は標準語かと思われる言葉があると思いきや、独特のインパクトある語尾で「標準語と違う表現だな」と感じる方言です。語尾にユニークな特徴があり、そのため「かわいい」「怖い」と話題になりますが、解説されると「そうだったのか」と安心できる方言なのです。
甲州弁は、まず語尾を理解しないと意味が通じません。そこで、山梨大学医学部附属病院では、県外出身の医療スタッフ向けに、甲州弁を詳しく解説した『甲州弁マニュアル』が渡されます。甲州弁を医療スタッフが分からないと、患者との意思の疎通ができないためです。
「~じゃん」
「~じゃん」という語尾は、東京を中心とした関東圏の若者の間で広く使われていますが、甲州弁でも使われています。夜更かししたルームメイトに「眠そうじゃん」と言ったり、外を見て「雨が降ってるじゃん」と言います。
「いいじゃない」の意味で「いいじゃん」とも甲州弁では表現します。「~じゃん」だけだと、東京弁と同じ表現だなと思われますが、甲州弁では更に「け」を語尾につけて「いいじゃんけ」とも言います。
「いいじゃんけ」を聞くと甲州弁と分かります。また「へえいいじゃんけ」は「へえーいいじゃない?」の意味ではなく、甲州弁では「もういいじゃない、やめなよ」という意味になります。
「~し」
よく使われる甲州弁の語尾には「~し」があります。標準語では「よし!」ぐらいにしか使いませんが、甲州弁の「~し」は促す意味があります。「~しなよ」という意味で、「やってみろし」(やってみたら?)や「あそこの店はいいからみんなで行けし」(行ってみろよ)と使います。
また、甲州弁の「~し」は「~しろし」と相手を注意する場合にも使います。「悪いぼこじゃん、こぴっとしろし」は「悪い子だね、シャキッとしなさいよ!」となります。
「~ずら」
甲州弁の「~ずら」は話題のかわいい表現です。日常生活で普通に使われ、「一緒に行くずら?」「ご飯食べていくずら?」と使います。この場合の「~ずら?」は「~でしょう?」と相手が断らないことを前提として話します。また「ほうずら」は「そうだね」という意味です。
「今日は残業っつーこんずら?」(残業ってことでしょ?)と「~ずら」は使われます。甲州弁の「~ずら」は平安時代の貴族が憶測の際に使っていた「むずらめ」から変化したと言われています。「むずらめ」から「んずらん」となり、「~ずら」になったと言われます。
「~ちょし」
甲州弁の「~ちょし」は相手を止める意味です。「~ちょ」には「~するな」という意味があります。そこで「やっちょし」は「やるなよ」です。または遠回しに「やらないほうがいいんじゃない?」と諭す意味でもあります。「行っちょし」は「行くな」です。
「やっちょし」「行っちょし」「言っちょし」は、他の地方では「厳しい」と受け取られる傾向があります。しかし、甲州の人たちに尋ねてみると、「普段使っている、温かい言葉です」「『~し』で終わる甲州弁は柔らかい印象がある」といった感想が返って来ます。
また、「~ちょし」は「~しちゃいんで」と変化し、「~しないで」と注意する意味にもなります。例えば親が子供に対して「んなうてげえししちゃいんで宿題しろし」と言うとします。甲州弁の「うてげえし」が「言い訳」と分からないと、全体が理解できません。
「しろし」は「しなさい」という意味ですので、「んなうてげえししちゃいんで宿題しろし」は「そんな言い訳しないで、宿題しなさい」と子供に親が促しているのですが、甲州弁を聞き慣れない人にとっては厳しい注意と受け止められてしまうでしょう。
「~け」
甲州弁の語尾で「~け」もかわいいとよく話題になります。疑問文で「一緒に行くけ?」などと使います。この場合、「行くずら?」よりは柔らかい誘い方となります。また疑問文だけではなく、普通に「いいじゃんけ」や「ほうけ」(そうか)と使われます。
また、お願いする場合にも、甲州弁の語尾には「~け」が付きます。「これ、くんでくれるけ」という表現は「これ、交換してくれますか」という意味です。「くんで」が「交換して」になり、「け」はお願いの意味です。東京では「水を汲んで、なの?」と勘違いされます。
日常でよく使われる甲州弁とその意味を解説
甲州弁には、そのままでは他の県の人に意味が伝わらない言葉がたくさんあります。意味を解説しないと、まるで外国語のように訳が分からないままになります。例えば「がさつにあいっちょ」は「下品に歩くな」という意味です。
「がさつに」が甲州弁では「下品に」となり、「あいく」は「歩く」という意味になります。「ちょ」は「するな」と禁止する意味です。甲州弁の言葉を知らないと、解説がない限り意味不明となるケースは非常に多いのです。
いっさら
甲州弁の「いっさら」の意味を解説すると、否定語を伴い「全然」ということです。近頃は「全然」という言葉は肯定文に使われ、「うん、全然いいよ」と言います。しかし甲州弁の「いっさら」には「~ん」「~ちゃいん」といった否定表現が必ずセットになります。
「いっさらわからん」という表現は「全然分からない」ということです。「あいつに言ったけんど、いっさらわかっちゃいんずら」は、「全然分かっていないよ」となります。「いっさら」や「ちゃいん」を解説してもらわないと、甲州弁には県外の人は苦労するでしょう。
山梨県の郷土料理として人気なのは、うどんより太めの麺を野菜と味噌とで煮込んだ「ほうとう」です。「ほうとう」とは何なのか、解説されないと「ほうとうはへーいっさら残っちゃいんと」が分かりません。
「ほうとうはへー」の「へー」は感嘆詞です。解説があって初めて「ほうとうは、もうねえ全然残ってないって」という甲州弁が理解できるという具合です。
ほうけ
甲州弁では相槌として、「ほうけ」(そうなの)がよく使われます。標準語で「そう」を、甲州弁では「ほう」と発音します。自分の話に対し、「ほうけ、ほうけえ」とうなづきながら言ってもらうと、解説なしで理解できるでしょう。
「ほうけ」という甲州弁は柔らかみがあり、温かい方言です。「ほうけえ?」と語尾を上げると「そうなの?本当なの?」という意味になります。甲州では若い女性が「ほうけ、いいさよ」(そうなの、いいよ)と話しています。「ほうけ」はかわいいと話題の甲州弁です。
よっちゃばる
「よっちゃばる」という甲州弁も、解説が必要ですが、「寄る」と「集まる」(ちゃばる)を合わせた言葉です。「道端によっちゃばるんはだっちもねえ」では「だっちもねえ」が「どうしようもないねえ」という意味です。
そこで、「道端によっちゃばるんはだっちもねえ」は「道端にみんなで集まって、どうしようもないねえ」という表現になります。甲州では、甲府駅北口多目的広場が「よっちゃばれ(集まれ)広場」と命名され、話題を呼んでいます。
「よっちゃばる」は「よっちゃある」とも言います。「よっちゃばる」は、解説されれば、単に「寄り集まる」という標準語よりも「ちゃばる」の音で、にぎやかに集まっている印象を受けるでしょう。
甲州弁は「解説がないと分からない」とよく言われますが、一旦意味を掴めば、標準語圏の人たちには「面白い」と話題になる方言です。「だっちもねえこんいっちょし」は「しょうもないこと言うな」という意味です。
「だっちもねえこんいっちょし」は、そのままCDのタイトルとなりました。1995年には甲州弁シンガーの原田喜照さんがCDをリリースし、爆発的な人気を呼びました。ラップでタイトルをリズミカルに歌っています。甲州弁はリズムを生むと話題になりました。
へぇだめどぉ
甲州弁で、「ああもうダメだ」と表現する場合は「へぇだめどぉ」と言います。発音は「へえ、だめどう」や「へえ、だめどぉ」「へえだめど」と、その場の気持ちで使い分けます。また、語尾を少々変えて「へえ、だめずら」や「へえ、だめどうに」とも言います。
サッカー観戦などで、応援するチームがもう勝てない場合など、「へぇだめどぉー」と肩を落とします。「へぇだめどぉ」には「諦めるしかないなあ」という以上の複雑なニュアンスがあるのです。
また、甲州の人自身が「へえ、だめどぉ」の「へえ」は標準語の「もう」だと思っている場合があります。しかし「へえ、もうだめどぉ」と言う場合もあるため、「へえ」は「ああ」といった感嘆詞の役割となっている訳です。
しわい
甲州弁の「しわい」は、強情だ、生意気だ、といった相手に対する反感を表します。「あこのぼこはえれぇしわいずら」は、「あそこの子供はすごい生意気なんだよ」という意味です。ケチだ、ずるい、うざいというニュアンスもあります。
「しわい」の意味を知らないと、旅行先だけではなく、東京から転居した場合の対人関係にヒビが入るかも知れません。「おまん、しわいわぁ」と言われたら、「あんたってずるいよねえ」と相手が皮肉っているか、怒っている場合もあるため、気をつけましょう。
甲州弁のかわいい表現
甲州弁は「汚い・面白い・怖い」など、人によって受け取る印象が実に様々です。しかし「汚い」と感じる人でも、その感覚の根底には「ユニークでかわいい」といったインパクトが根付いている場合があります。
甲州弁ラップソングが人気なのも、甲州弁の意外なかわいさが理由なのです。甲州弁では「だいすきさよぉ」や「おはずら」(おはよう)など、かわいい表現が豊富です。「こぴっと」(しゃきっと)などの音にかわいさが籠ります。
わにわに
「わにわに」という甲州弁は「落ち着きがない・ふざける・調子に乗る」という意味です。山梨では、よく母親がきゃあきゃあ落ち着きがない小さい子供に対し、「わにわにしちょし!」と怒っています。
「わにわにしちょし!」では、「しちょ」が「~してはダメ」という意味で、更に強調の「し」が付いて、「ふざけるんじゃないよ!」ということです。「わにわに」以外に「わさわさ」も同じ意味で、「わさわさしたぼこじゃん」は「うるさい子だね」となります。
ちょびちょび
「ちょびちょび」という甲州弁は、まずその音のユニークさとかわいさが魅力的です。人によっては「変な方言」と感じるかもしれませんが、「ちょびちょび」は「わにわに」と同じで「調子に乗る」という意味です。禁止する言葉とセットで使います。
「ちょびちょびしちょし」では、「しちょし」が「~するな」ですので、「調子に乗るなよ」という意味です。また「ちょべちょべ」も同じ意味で、「ちょべちょべしてるじゃん」(調子に乗ってるな)のように使います。
てっ
感嘆や驚きの「てっ!」は甲州でよく使われます。「まあてっ!すげえじゃんけ」(まあ!すごいですね)「てっ!ありがとうごいす!」(うわあ!ありがとうございます!)「てっ!おまんが作っとうけ?」(へえ!君が作ったの?)と言います。
山梨県でも南アルプス市では国中弁が使われています。国中弁では、感嘆に「でっ!」を使います。「で~」とも言い、本当にびっくりした驚きを表現します。
こまっちもー
甲州弁の「こまっちもー」は、「困る・困ってしまう」の意味です。「困っちゃう、もう」が甲州弁として訛り、本当に困っている気持ちを表現します。例えば夏休み前に宿題や課題が出ると、大抵の生徒や学生は「遊ぶ期間があるかな」と困ります。
「こまっちもー」は、「てっ!こんなに課題もらってこまっちもーずら」(うわあ~!こんなに課題が出されて、もう困るんだよ)「おらんぼこ、こぴっとしねぇからこまっちもーけ」(うちの子はしゃんとしないもんだから、困っちゃうのよね)というように使います。
また、悩む相手を慰めたり、肩の荷を下ろしてあげたい時は、「ほんねん(そんなに)こまっちょしー」と言います。「そんなに困らないでね、気楽にしてね」という意味です。「そんなに」は「ほんねん」となるように、「そん」が「ほん」と発音されます。
「課題でこまっちもー」という学生や我が子に対して、励ましたい場合は「ほんなこん、気にしちょー」(そんなこと気にしないで)と甲州弁では表現します。「ほんねん・ほんなこん」(そんなに・そんなこと)の響きは「ほ」で始まり、優しく安心できる言葉です。
ジャッシー
甲州弁では、ジャージ製の運動着を「ジャッシー」と言います。「ジャッシー」と発音するのがかわいく聞こえます。甲州の先生は制服を着ない生徒に「ジャッシーで登校しちょって言っつら!」(ジャージで登校するなと言ってるだろうが!)と注意します。
甲州弁の「ジャッシー」は、英語のjerseyを甲州の運動着業者がローマ字読みをして「ジャッシー」と言ったことが由来だそうです。「うらぁ、『ジャッシー』とって言い慣れちまっただよね」(僕は「ジャッシー」言い慣れちゃったね)と山梨の高校生はよく言います。
甲州弁は素朴であたたかみのある方言
甲州弁を聞いて、かわいいか、田舎臭いかなどの受け取り方は人によりけりです。しかし、甲州弁のかわいさに惚れ込み、もっと甲州弁を知りたくなる人はたくさんいます。山梨の人と甲州弁で話してみると、きっと日本語も深く心豊かなものになるでしょう。