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伊勢海老よりも美味といわれる幻のエビ「ウチワエビ」
頭の上を重たいもので押し付けられたような不思議な形をしたウチワエビですが、実は甘みと旨味が強く、一説では「伊勢海老より美味しい」といわれる高級食材です。
日本国内でも食用として漁獲されるウチワエビですが、熱帯域に生息しているため、日本海側の地域にはほとんどおらず市場に回ることも基本的にありません。そんなウチワエビですが西日本地域ではよく知られた海老なので、美味しい食べ方もたくさんあります。
ウチワエビって?
ユニークなフォルムをしたウチワエビは、実は伊勢海老以上に美味しいといわれる高級食材です。ウチワエビと呼ばれるものには全部で8種類あるのですが、日本で漁獲できるのはウチワエビとオオバウチワエビの2種類です。
ただしどちらも全国的な知名度は低いため、一般的にウチワエビ・オオバウチワエビを総称して「ウチワエビ」と呼んでいます。
ウチワエビは主にインド太平洋に分布する海老で、日本周辺でも熱帯・温帯海域にしか生息していません。そのためウチワエビ漁がおこなわれる西日本地域ではよく知られた食材ですが、日本海側の地域では「ウチワエビを見たことも食べたこともない」と答える人も多いです。
セミエビ科に属するエビ
ウチワエビは、ウチワエビ属セミエビ科に属しています。セミエビ科にはウチワエビのほかにもセミエビやゾウリエビなどがいますが、どの種類も上から何かで押し付けられたような扁平な体をしているのが特徴です。
体の表面は堅い殻に覆われていますが、ウチワエビの殻のふちにはのこぎり歯のような棘が(とげ)があります。さらに胴体部分の左右に大きな切れ込みがあるのもウチワエビの特徴で、味の比較として名前が挙げられる伊勢海老の胴体には見られない特徴です。
なおウチワエビの体色は伊勢海老と同じようにうっすらと紅色をしていますが、ウチワエビの一種であるオオバウチワエビは全体的に黒っぽい色をしています。
なお長い脚と触角が特徴の伊勢海老と比べてみると、ウチワエビの方がどちらも短いのがわかります。特に足は極端に短く、体を裏返さない限り背中側から足を見ることはできません。
ところがウチワエビはこの短い足を使って、海底を歩いて移動します。なぜならウチワエビは全く泳ぐことができないからです。ただしウチワエビにも天敵はいます。
海底300mまでの浅瀬の海底で生活するウチワエビは、普段は貝やゴカイなどの多毛類を食べていますが、そんなウチワエビを捕食するのが海のハンターであるサメやエイ、そしてタコです。
体も小さく泳ぐこともできないウチワエビですが、天敵に遭遇したときには驚きの行動でその場を切り抜けます。なんとウチワエビは尾の部分を使って海底を蹴り、素早く後ろにジャンプして逃げるのです。
ちなみにウチワエビと同じセミエビ科のセミエビやゾウリエビの足は、背中側からでも確認できるほどの長さがあります。セミエビやゾウリエビも泳ぎが苦手なので海底を歩いて移動しますが、ウチワエビのようなジャンプ行動は見られません。
なお見た目が似ているウチワエビとセミエビ・ゾウリエビですが、並べてみると頭と背びれの大きさに違いがあります。明らかに違うのが頭部で、ウチワエビは平べったいのに対して、セミエビ・ゾウリエビは扁平ながらも厚みがありふっくらとした丸みがあります。
この厚みがある分、セミエビやゾウリエビの方がウチワエビよりも身の量が多く、市場では2万円/kgの値が付きます。
なおウチワエビを含むセミエビの仲間は、漁獲量が少ないのことも高級食材といわれる理由の1つです。伊勢海老漁の網に紛れてとれるため、高級料亭などに一部卸されますが、一般の市場に出ることはなくほとんどが地元で消費されます。
伊勢海老以上に濃厚な味が特徴のウチワエビですが、同じセミエビの仲間の中でも体の厚みが薄いため、身は詰まっていますが量が少ないです。そのためウチワエビがとれる地域では様々な調理法で食べられていますが、それ以外の地域で食べ方や味が紹介されることはほとんどありません。
なおとれたての新鮮なウチワエビの身は半透明の白色をしており、伊勢海老以上に甘みと旨味があります。また殻から濃厚な出汁ができるので、汁物や鍋料理にしても美味しいです。
名前の由来はその姿から
ウチワエビの名前の由来は、頭部の特徴的なフォルムにあります。ウチワエビは漢字で「団扇海老」と書きますが、これも頭部の形に由来します。
背中側からウチワエビの頭部を見ると、まるで団扇のように大きく広がっているのがわかります。また横から見ると、団扇のように見える部分の厚みが極端に薄いことにも気がつきます。
しかも円盤のように広がった頭部は尾を含めた胴体とほぼ同じ長さなので、上から全体を見ると団扇のように見えてきます。
ちなみに宮崎県ではウチワエビのことを「パタエビ」「パッチンエビ」の愛称で知られる身近な食材で、味噌汁や塩茹でなどにして家で食べることもあります。
さらに昔からウチワエビに馴染みのある地域では、「シラミ」「ハタキエビ」「セッタ」「バタバタ」「ヒッパタキ」「パチパチエビ」「ペッタン」など、見た目から連想されたと思われるユニークな名前で呼ばれています。
体長は15~20㎝程
伊勢海老よりも美味しいといわれるウチワエビですが、体長は15cm~20cmなので伊勢海老海老と比べるとかなり小さいです。しかも胴体部分が短く、頭部の厚みもないため身の量も少ないです。
漁獲量が少ないため昔から市場に出回らずほとんどが地元で消費されていましたが、最近では伊勢海老以上に美味しいことが少しずつ知られるようになり、贈答品や通販のお取り寄せグルメとして名産品化しています。
同じセミエビ科のセミエビは、ウチワエビのような味をもちつつ身の量も多いので高値が付きますが、ウチワエビはセミエビと比べると値段はリーズナブルです。
とはいえここ数年は「伊勢海老を超える美味しい海老」とネットでも有名になったため、ウチワエビの生育地ではない東京でも食べられるようになりました。その影響でネット通販でも取引されるようになり、今では伊勢海老と並ぶ高級食材になっています。
ウチワエビの主な産地
西日本地域では家庭でもよく食べられるウチワエビですが、東京以北の日本海側では高級食材として注目されています。その背景には、ウチワエビの産地が限られていることも関係しています。
主に西日本で多い
西日本地域でよく知られているウチワエビ漁は、西日本地域に集中しています。水深100m~300mの浅瀬の海に生息するため、底引き網でもとることができます。
なお熱帯域・温帯域に広く分布しているため、主な産地は九州・沖縄地方から日本海西部が中心です。また関東周辺では千葉県でもとれますし、日本海中部地域でもウチワエビがとれる地域もあります。
ただし圧倒的に漁獲量が多いのは西日本地域なので、「ウチワエビの産地=西日本地域」というのが一般論です。
宮崎県や長崎県の五島列島が有名
ウチワエビの産地として最も有名なのは、長崎県の五島列島です。五島列島は長崎港から西に100km離れた場所にある列島で、大小合わせると140ほどの島があります。
五島列島周辺は複雑なリアス式海岸線があり、ウチワエビなどの海老や良質な魚介類が豊富にとれる国内屈指の漁場としても有名です。そのためどの島も漁師が多く、高級食材のアワビやスルメ、水イカ(アオリイカ)も五島列島の特産品として人気があります。
ただし五島列島でのウチワエビ漁は、資源保護のために漁業権・漁獲期間が決められています。さらに五島列島でのウチワエビの漁獲は漁場も指定されています。
なおウチワエビの漁獲が認められているのは、大浜地区と冨江地区のみです。そのため五島列島はウチワエビの産地ではありますが、限られた場所でしか獲ることができないので全国的にも希少価値が高いです。
「パッチンエビ」「パタエビ」の愛称でウチワエビを呼ぶ宮崎も、ウチワエビの産地として有名です。宮崎も良好な漁場が多く、昔から漁業が盛んに行われてきました。
しかも宮崎周辺の海には様々な種類の甲殻類が生息しており、ウチワエビ、オオバウチワエビ、セミエビのほかにもイセエビやアサヒが二、タカアシガニ、ノコギリガザミなど、美味しいと評判の高級食材が豊富にとれます。
なお宮崎の主な産地はウチワエビ・オオバウチワエビともに川南、南郷、串間に集中しており、小型の底引き漁が主な漁法です。
ウチワエビの旬はいつ?
凝縮した身と内子が美味しいウチワエビは、秋に産卵期を迎えます。そのため一般的にウチワエビの旬は秋~冬といわれています。ところが漁獲期間が決められているため、実際に食べることができるのはウチワエビの漁獲期間です。
もともとウチワエビは特殊な成長過程をたどって大きくなります。孵化したウチワエビは浮遊するクラゲにとりつき、エサとして食べながら成長します。そのためクラゲにとりついているウチワエビの幼生は、泳げなくても自由に海の中を移動できます。
さらに生命力が非常に強いので、クラゲにとりつかなくても海に漂いながら自力で移動します。そのため分布域も西日本地方だけでなく、千葉県や能登半島まで広げることができたのです。
そんなウチワエビですが、市場には出ずほぼすべて地元で消費していたので、これまでは比較的個体数も安定していました。ところがネットなどで美味しいと注目されてからはネット通販で簡単に購入できるようになったため、地元以外での消費量が増えてしまいました。
需要が高まれば高値で取引されるようになるため、乱獲も見られるようになり個体数が減少します。そこでウチワエビの保全のために、産地では漁獲期間が設けられました。ウチワエビ漁の漁獲期間は産地によって異なりますが、特に規定が厳しい長崎では1年で2ヵ月間だけ漁獲が認められています。
なお鮮度が命のウチワエビは、活きのよいウチワエビほど高値が付きます。そのこともあってウチワエビの旬は、「漁獲期間=旬」といわれます。
美味しいのは冬から初夏あたり
熱帯域・温帯域の海に生息するウチワエビなので、旬を迎えるタイミングも地域によって違います。全国的にも産地として有名な長崎・五島列島では冬にウチワエビ漁が解禁されるので、長崎周辺では冬がウチワエビの旬です。
ところが同じ九州地方の宮崎県では、冬ではなく春から夏にかけてウチワエビ漁がおこなわれます。そのため宮崎県周辺では春~初夏がウチワエビの旬となり、長崎の旬とはタイミングがズレます。
長崎県五島では10月1日~11月末までが漁期
ウチワエビの保全のために漁場を2か所に限定している五島列島では、ウチワエビの漁期も厳しい規定があります。
ウチワエビを含む魚介類の多くは、産卵期が旬といわれています。産卵のための栄養をたっぷりと体に蓄えるため、身が詰まり旨味も凝縮されます。
ただし産卵前のウチワエビを大量にとってしまうと、結果として個体数の減少につながります。そのため長崎・五島列島では毎年10月1日~11月30日にウチワエビ漁が解禁されます。もちろんこの時期のウチワエビは旬を迎えているので味は美味しいですし、2か月間限定の漁なので希少価値も高いです。
ウチワエビの美味しい食べ方は?
東京などでは高級料亭などでしか食べられないウチワエビですが、西日本地域では安く手に入るため、旬のウチワエビを使った美味しい食べ方がたくさんあります。
刺身
ウチワエビの刺身は、シンプルな調理法だからこそウチワエビ本来の味・食感・旨味がよくわかる食べ方です。新鮮なウチワエビの身は白みがかった半透明の色で、味は伊勢海老の刺身よりも甘く感じられます。
程よく身がしまっているので、口に入れた瞬間も水っぽさがありません。かといって柔らかすぎるわけではないので、噛むごとに濃厚な甘みがじんわりとしみだしてきます。
塩焼き
加熱しても身が硬くならないウチワエビは、塩焼きにする食べ方も人気です。地元ではほかの魚介類と一緒に海鮮バーベキューにする食べ方も人気で、強めに振った塩がウチワエビ特有の甘みを引き立ててくれます。
ただしウチワエビの殻のふちにはのこぎり歯のような棘があるので、豪快に手でもって食べるときには怪我をしないよう、食べ方に注意しましょう。
ボイル
ボイルにする食べ方も、ウチワエビの美味しい食べ方の1つです。一般的に魚介類をボイルすると中から汁が出てしまうのですが、ウチワエビの場合はボイルしても殻の中に汁が閉じ込められるため、身もジューシーです。
もちろん熱々のうちに食べるのが1番美味しいですが、冷めても身が硬くなりにくいので、ボイルしたウチワエビを1度冷ましてから身をほぐし、サラダや和え物にする食べ方もおすすめです。
味付けせずにボイルしたウチワエビをお好みの調味料につける食べ方も美味しいですが、塩で味付けしたウチワエビのボイルもおすすめです。
なお沸騰前のお湯にやや多めの塩と少量の酢を加えるのが、美味しい塩ボイル作りのポイントです。ただし茹ですぎると身が堅くなるので、茹で時間は5分程度を目安にしましょう。
みそ汁
殻から上質な出汁が出るウチワエビは、味噌汁にする食べ方も人気です。特に生息地の海に面した西日本地域では、海産物系の食堂やイベントなどでウチワエビの味噌汁が出ることもあります。
「伊勢海老より美味しい」といわれるようになったことで高級食材の仲間入りをしたウチワエビですが、もともとは地元だけで消費されるマイナー食材なので、ウチワエビの産地では旬になると安く仕入れることができます。
しかも全長15~20センチメートルのウチワエビなので、どんぶり椀なら縦半分、普通サイズ椀なら頭と胴体の2つにカットすれば家にある器でもちゃんと中におさまります。
天ぷら
「高級食材でも見た目が苦手」という人には、ウチワエビを天ぷらにする食べ方がおすすめです。取り出した生の身に衣をつけて揚げるので、食材の正体を知らないで食べると、高級な伊勢海老の天ぷら食べている感覚になります。
ただしウチワエビは加熱することで甘みと旨味が増すので、食べすすめると伊勢海老との味の違いに気がつきます。なお天ぷらにしても固くなりにくいので、冷めても最後まで美味しく食べられます。
ウチワエビが堪能できるお店
地元では様々な食べ方で親しまれている身近な食材・ウチワエビですが、東京や日本海沿いの地域ではほとんど手に入らない高級食材なので、実際に食べられる場所もなかなかありません。
とはいえウチワエビはすでにネットやメディアで「伊勢海老以上に美味しい」と注目されている食材なので、最近では地元だけでなく東京でもウチワエビが食べられるお店があります。
海食べのすゝめ
明太子の老舗「ふくや」が直営している海食べのすゝめは、ちゃんぽんと定食がメインのお店です。定食にはサバやイワシ、銀ダラなどを使った魚料理が多く、中でも一夜干しは焼き加減が絶妙と人気があります。
また「ふくや」直営店ということもあり、年会費無料の会員カード・ふくやカードを提示すると、明太子が食べ放題になる特典付きです。そのため明太子ファンが多い福岡では「思う存分明太子を食べられる」と評判で、店内にはサラリーマンや家族連れなど地元客の姿も多く見られます。
そんな海食べのすゝめで食べることができるウチワエビメニューが「海食べ特ちゃんぽん」です。海食べ特ちゃんぽんには旬のウチワエビが丸ごと1匹入っているだけでなく、カニ爪やホタテ、エビワンタンなど海鮮類がたっぷり使われています。
海食べ特ちゃんぽんのウチワエビは長崎平戸湾から直送されたものを使っており、スープにもウチワエビの出汁がしっかり効いています。ベースはあっさり系の海鮮スープですが、ウチワエビの甘みと旨味が強いので食べ応えがあります。
住所 | 福岡県福岡市早良区小田部3-1-7 |
電話番号 | 092-845-8611 |
海鮮市場 長崎港 出島ワーフ店
長崎港のワーフ内にある「海鮮市場長崎港ワーフ店」は、長崎の新鮮な魚介類を使った海鮮専門店です。港にある店なので、テラス席に座れば港の景色を眺めながら美味しい海鮮料理を食べることができます。
店内には巨大ないけすがあり、長崎港で水揚げされた旬の食材がぎっしりと詰まっています。名物メニューは旬の魚介がたっぷりと入ったどんぶりメニューで、具材の多さからご飯が完全に隠れています。
もちろんウチワエビもその中に含まれており、なかでも新鮮さが命の「ウチワエビの刺身」は地元客からも人気です。海鮮居酒屋ですが昼11時からオープンするので、ランチにもおすすめです。
住所 | 長崎県長崎市出島町1-1出島ワーフ内1F |
電話番号 | 095-811-1677 |
浅草 魚料理 遠州屋
東京でウチワエビを食べたいのであれば、浅草寺の近くにある「浅草魚料理遠州屋」がおすすめです。老舗海鮮料理店として浅草で有名な遠州屋では、江戸前寿司や海鮮しゃぶしゃぶなどの鍋料理が人気です。
そんな遠州屋では、長崎平戸から直送したウチワエビをふんだんに使った「幻の国産天然活きうちわ海老尽くしのコース」が食べられます。
コースでウチワエビの刺身、焼き物、しゃぶしゃぶ、天ぷら、味噌汁が食べられますし、しゃぶしゃぶの〆の雑炊(またはうどん)は、ウチワエビの出汁が効いていて絶品です。
住所 | 東京都台東区寿2-2-7 |
電話番号 | 03-3844-2363 |
幻の高級エビ「ウチワエビ」はやっぱり絶品だった!
見た目からは想像もつかないほど旨味・甘みが強いウチワエビは、伊勢海老よりも美味しいと人気の高級食材です。そんなウチワエビは、鮮度抜群の産地で食べるのが1番です。西日本以外では馴染み少ないウチワエビですが、絶品料理を食べにたまには産地まで足を運んでみませんか?