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みかんの白い筋は取らない方が良い?
冬におすすめの果物といえば、まずみかんが挙げられることでしょう。みかんは栄養豊富に加え皮をむくだけで簡単に食べられるおすすめの果物でもありますが、みかんを食べようと皮をむいてみると果実の周りを白い筋が取り巻いています。
みかんの白い筋は外側の皮と本体をうまくつなぎ合わせるクッションのようにも見えます。白い筋を「筋」「綿」などという場合もあり、昔は白い筋が体に良くないといわれており、よく取って食べられていました。
みかんでは一番外側の皮も食べることはありますが、主に食べられるのは中心のみかん色をした果汁の多い部分です。味のない白い筋は余計なものとして取り除いて食べる一方、みかんの白い筋は栄養や食物繊維と考え、そのまま食べたりと食べ方も人によりさまざまです。
みかんの白い筋は味もなく毒でも薬でも無いようですが、みかんの食べ方として白い筋を取るように決めている人も全部きれいに取るとなると時間がかかるので、太目のものだけ取るなど適当なところで調節しているようです。
果たして、この一見不要に思えるみかんの白い筋は何のためにあり、何の役に立っているのでしょうか?詳しく見てみましょう。
みかんの白い筋はなんなの?
みかんは皮をむけば白い筋に包まれた可食部がありますが、それぞれの組織には名前が付いています。自然界に無駄なものはありません、みかんの白い筋もなにかしら役目があるのでしょう。そこで、みかんの実の構造を調べてみましょう。
みかんの皮をむいて一房を見ると、薄皮の中に基本構成となる果汁の多い細長い小さな粒々が詰まっています。小さな粒々には「さじょう」という名前が付いています。漢字で書くと難しい字ですが「砂瓤」となります。「瓤・じょう」は子房を意味します。
次に、「さじょう」が詰まっているみかんの房を見ましょう。この房はよく「袋」「薄皮」などと呼ばれていますが、正式な名前は「じょうのう膜」といいます。みかんの房は「じょうのう膜」に粒々の「さじょう」が詰まったものです。
「じょうのう膜」を漢字で書くとまた難しく「瓤嚢膜」となり「嚢・のう」は小袋の意味です。「じょうのう膜」の中身「じょうのう」が丸く集まったものが普通に食べられているみかんの可食部です。
正式名称は「アルベド」
さて、みかんの皮の部分はみかんの果実の一番外にあって内部を保護していますが、これは外果皮(フラベド)といいます。白い筋はその裏側に付いています。
外果皮の内側には白い筋がクッションのようになって先ほどの「じょうのう膜」が丸く集まっている部分を包んでいます。この白い筋には中果皮(アルベド)という名前が付いています。アルベドとは英語で「albedo」と書き、色の白い度合を意味するラテン語起源の言葉です。
みかんの果実は外果皮・中果皮・内果皮に包まれた構造になっています。じょうのう膜は内果皮にあたります。みかんの白い筋は、外果皮(普通にみかんの皮)と内果皮(じょうのう膜・薄皮)の中間にあるので中果皮(アルベド)となっています。
果実に栄養を運ぶ
葉の光合成で作った有機物や根から吸収した栄養素や水分の通路の役割をしている組織を維管束といいますが、みかんの白い筋には維管束が通っています。
みかんの白い筋の中を通っている維管束は、それぞれがみかん上部のヘタにつながっています。白い筋はヘタから枝を通して葉や根にまで栄養素や水分の供給路としてつながっています。みかんの白い筋は決して余分なものではなく果実を育てるための重要な働きをしているのです。
みかん以外のオレンジなどもみかんの仲間で白い筋がありますが、オレンジなどでは白い筋はもっと多量にありしっかりとして、また、種の数も多くなっています。みかんでは白い筋は他のオレンジ類ほどに生育しないので取るのが簡単なのです。
みかんの白い筋の栄養
みかんの白い筋は余分なものではなく、みかんの果実が成長するためにも大切な役割があるということが分かりました。みかんの白い筋は繊維状で拡大すると断面は中空になっています。この繊維が密集している部分が維管束で果実への水分や栄養分の補給路になっています。
栄養分の補給路になると同時に、みかんの白い筋はそれ自体も栄養に富んでいて食物繊維の一種であるペクチンを豊富に含んでいます。また、みかんの白い筋は人の健康にも有用なビタミンP(ヘスペリジン)を始めとする数多くの栄養素を含んでいます。
人体に有用な栄養を含んでいることから、最近ではみかんの食べ方としては白い筋を取らないでそのまま食べるほうが良いといわれるようにもなってきました。
ペクチン
食物繊維の一種である「ペクチン」はみかんの白い筋に豊富に含まれています。ペクチンは、果汁にも含まれていますが、みかんの白い筋を始め固形部の方に多く存在しています。
みかんの白い筋に豊富なペクチンはコレステロール・血糖値の調節、便通の改善効果があります。また、ダイエットにも効果があり、食前にみかんを1つ食べると糖質・コレステロールの吸収を減らし、燃焼を進める効果があるとされています。
ペクチンには不溶性・水溶性があります。不溶性ペクチンはみかんの白い筋など細胞壁に分布していますが、果実が熟すにしたがって水溶性に変わります。水溶性ペクチンは細胞同士を接着する役割があり、食品関係で増粘安定剤・ゲル化剤や胃腸薬として活用されています。
ヘスペリジン
「ヘスペリジン」はポリフェノールの一種・天然由来の有機化合物群の植物色素であるフラボノイドで、みかんの白い筋に多く存在しており白い筋には果肉の40倍量のヘスペリジンが含まれています。また、みかんが青い状態のほうがより多く含有しており熟すと減少します。
みかんの白い筋のヘスペリジンは人体に対して毛細血管を強化することが分かっており、中性脂肪を低下させる、血圧を改善する、冷え性を改善するなどおすすめの作用があります。
ただし、みかんの白い筋のヘスペリジンは極度に水に溶けにくいために、みかんの白い筋を大量に食べたとしても体には吸収されにくいのが欠点です。この欠点を補うため近年、ヘスペリジンよりも人体への吸収性が3倍という「糖転移ヘスペリジン」が開発されています。
みかんの白い筋を簡単に取る方法
近年では、みかんの白い筋は栄養面から食べるのがおすすめとされるようになりましたが、食べ方は人により様々です。栄養を考えて、あるいは単に取るのが面倒だから白い筋を食べるという考えがある一方、みかんの白い筋は必ず取るという食べ方の美学もあって良いはずです。
箸の持ち方と同じように、それぞれの人が育った地方や家庭でみかんの白い筋を取るか取らないかの食べ方の習慣が身についていれば簡単には変わらないことでしょう。
また、みかんの白い筋は、味は無く食感も良くありません。また、見た目も良くないので、きれいに白い筋を取る食べ方のほうが白い筋を残したままの食べ方よりも日本人の美意識に合っているのかも知れません。そこで、みかんの白い筋を簡単に取る方法を調べてみましょう。
お湯を使う方法
みかんの白い筋を簡単に取るためにおすすめしたいのがお湯を沸騰させて1分間湯煎する方法です。湯煎した後は水で冷やします。みかんの熱が取れたらそのまま皮をむくと白い筋は皮にくっついて簡単に取ることができます。
みかんを煮て熱を加えるとペクチンに作用して皮と白い筋は実から離れるためこの方法が使えます。お湯で煮るという一手間余計にかかりますが、みかんを沢山むく必要がある場合におすすめの方法です。
ヘタの方から皮を剥く方法
みかんを手でむくときは逆さに置き、爪で切れ目を入れて皮をむいていくというのがよくある方法です。しかし、この場合白い筋が多めに残ってしまい、残った白い筋をさらに取り除くのに時間や手間がかかるためあまりおすすめ出来ません。
みかんの白い筋には方向性があり、白い筋は上部のヘタから始まりヘタを中心にして広がって下側に伸びています。このため、ヘタの側から房と白い筋を離すようにむいていけばきれいに白い筋を取ることができます。おすすめの簡単にできるむき方です。
みかんは白い筋を取らずに食べるのがおすすめの食べ方!
みかんを食べるときに白い筋は取らないというのが近年のおすすめのようですが、みかんの食べ方はバラエティーに富んでいて面白いものです。白い筋は気にならないので取らない人もあれば、きれいに取る人、果汁だけ吸って薄皮(じょうのう膜)は食べないという人もいます。
身に付いた習慣はそんなに変わるものではありませんが、白い筋が実は栄養に富んでいたことが分かりました。食わず嫌いだった人は一度試してみるのもいかがでしょうか。