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様々なバリエーションのある「いももち」
日本全国にはさまざまな郷土料理が存在します。古くから伝わる伝統的な郷土料理もあれば、その土地でしかとれない珍しい食材を使った郷土料理もあります。しかも郷土料理は、バリエーションが豊富なのも特徴です。
そのため主食系、おかず系、汁物系、スイーツ系など、カテゴリー別にいろいろなレシピが存在します。そんな郷土料理の1つ「いももち」は、地域によってスイーツにも主食にもなる変幻自在の郷土料理です。
レシピ名に「いも」がつくいももちですから、原材料にはいもが使われます。ところが地域によって使用するいもの種類が違いますし、レシピも地域で異なります。
そのため同地レシピ名を持つ郷土料理ですが、地域ごとにまったくちがった味や食感のいももちを食べられるのが特徴です。
いももちってどんな郷土料理?
郷土料理として有名ないももちですが、どの地域のいももちも「いもを使う」ということ以外は共通点があまりないです。そのため「いももちとはどんな料理?」という質問に対する答えは、地域によって違います。
つまり日本で古くから親しまれているいももちですが、あくまでも同じ名前で呼ばれる郷土料理であって、その他の郷土料理と同じようにその地域ならではの作り方が存在するというのが「いももち」なのです。
北海道・和歌山・高知などで普及する郷土料理
ご当地グルメがメディアで積極的に紹介されるようになったことや、郷土料理のアレンジレシピがSNSなどで簡単に検索できるようになったため、今では住んでいる地域に関係なく「いももちという郷土料理がある」ということを知っています。
ところが「いももちはどんな郷土料理?」という質問に対して即答できる人は少ないです。しかもその答えが地域によって違うのも、いももちならではの特徴といえます。
全国的によく知られているのは北海道版いももちですが、「いももち=北海道版いももち」というのは満点回答ではありません。
もちろん北海道で食べられているいももちであれば「いももち=北海道版いももち」で正解ですが、北海道だけでなく和歌山・高知・新潟などでもいももちは昔からよく食べられている郷土料理です。しかも北海道版いももちとまったく違ったレシピが存在します。
ですから北海道版いももちの隣りに和歌山版いももち、高知版いももち、新潟版いももちを並べても、それらがすべて同じ「いももち」であるということが分かる人は少ないです。
地域によって使う芋も調理法も異なる
それぞれの地域のいももちを並べても見た目がまったく違って見えるのは、いももちの原材料であるいもの種類が違うことも関係します。もともといももちレシピは、米が手に入りにくい地域で主に作られるようになった郷土料理です。
そのため「いももち」といってももち米を使わないレシピもありますし、もち米を使う場合も調理法が違います。ですから同じ名前で呼ばれているいももちですが、実際にはそれぞれに違った料理と考えた方がよいでしょう。
各地域のいももちの特徴
古くからいも栽培が盛んな地域では、郷土料理の1つにいももちがあることが多いです。そんないももちは地域でよくとれるいも種を使っていることが多く、いももちのレシピも地域ごとに違います。
なお現在でも家庭料理やB級グルメとしていももちを頻繁に食べられいるのは、北海道、和歌山、高知、岐阜、新潟の5地域です。
この5地域のいももちは地域の特産品として物産展などに出品されることも多いので、「実際に食べたことがある」という人も多い代表的ないももち料理といえます。
家庭ごとの味付けがある北海道のいももち
北海道版いももちは、北海道の特産品であるじゃがいもを使います。昔からよく食べられてきたため、郷土料理ではあるものの、北海道の特産品としても人気があります。
北海道版いももちが誕生したのは、現在のように稲作技術が発達していなかった頃です。そもそも北海道は非常に寒さが厳しい地域で、作物の栽培にはかなり苦労しました。
稲作もそのうちの1つだったため、北海道で安定的に稲の収穫ができるようになるまでは、貯蔵にも便利なじゃがいもをもち米の代わりにして作ったのが北海道版いももちのルーツです。
もち米を使わず片栗粉(じゃがいもが原料)などを使ってもちのように仕上げるのが北海道版いももちの特徴で、今でもそのスタイルは変わりません。じゃがいもの産地である北海道ですから、もち米が買えなくてもじゃがいもを使えば餅もどきがたくさん作れます。
しかも調理に時間がかからず簡単に作れることから、家庭料理として広く浸透していきました。じゃがいもを使った北海道版いももちは高たんぱくで腹持ちも良いため、明治時代に行われた北海道開拓団の間でも北海道版いももちは大人気レシピでした。
北海道では今でもおいしいじゃがいもが一年中手に入るので、家庭でもよく作られていますし、居酒屋やスーパーのお総菜コーナーでも人気メニューです。
きな粉をまぶした和歌山県のいももち
和歌山版いももちには、もち米を使います。ですから名称通り「いもを使ったもち=いももち」といえます。和歌山版いももちに使われているのは、和歌山の農産物として有名なさつまいもです。
和歌山版いももちは、和歌山県内全般で食べられる郷土料理ではなく、県南部地域で主に食べられています。熊野灘沿いにある和歌山県南部地域は、背後に山が迫っているため、平地がとても少ないのが特徴です。
そのため稲作に適した地域とは言えず、もちづくりに欠かせないもち米は非常に貴重な存在でした。その代わりさつまいも栽培に適した赤土の大地が広がるため、甘みが強くおいしいさつまいもがたくさんとれることで知られています。
そんな和歌山県南部地域特有の気候状況が関係し、「少量のもち米でもおいしいもちを作りたい」という想いから誕生したレシピが、さつまいもを加えた和歌山版いももちです。
なお和歌山版いももちにはきな粉をたっぷりまぶしているのでスイーツとして食べられることが多いのですが、この地域では長い期間さつまいもを主食としてきたため、きな粉を付けない場合は主食にすることもあります。
干し芋を使って作る高知県のいももち
高知版いももちはもち米にさつまいもを使うのですが、さつまいもは生のさつまいもではなく干しさつまいもを使うのが特徴です。
ただし高知県全域で干しさつまいもを使うというわけではなく、和歌山版いももちのように蒸したさつまいもともち米を練りこんで作るいももちもあります。ただしもち米に練りこんで作る和歌山版いももちはあまり日持ちがしません。
ところが干しさつまいもを原材料に使う高知版いももちは日持ちもしやすく、アレンジもしやすいです。どちらのレシピが先に誕生したかはわかりませんが、近年では「干しさつまいもを使うレシピ」が改めて注目されています。
もち米を使う以外はさつまいもと砂糖のみなので、さつまいもの種類によって色や味の違いが楽しめるところがおすすめです。
ただしさつまいもの収穫時期にしか作らない家庭料理なので、ほとんどが県内だけで消費されます。そのため高知県内では旬のスイーツとして人気ですが、他県ではほとんど知られていないのが高知版いももちです。
里芋と米を炊き上げて作る岐阜県のいももち
岐阜版いももちには、里芋と米を使うのが特徴です。芋以外の食材を使って作るいももちではもち米を使用することが多いのですが、岐阜版いももちにはもち米ではなく米を使うのが特徴といえます。
作り方も他地域のいももちレシピとは大きく違い、里芋と米を一緒に炊いて作るのが特徴です。そのため岐阜版いももちは、主食として食べることが多いといえます。岐阜で里芋栽培が盛んなのは美濃地方で、収穫時期は10月下旬~3月下旬です。
じゃがいもやさつまいものように追熟して糖度を高める食材ではないので、岐阜版いももちは里芋の旬である秋~春にかけて食べる郷土料理とされています。
なお地元では粘り気の強さが特徴の里芋「西方」で芋もちを作るのが定番です。ご飯は完全につぶさず食感が残る程度にするのも、岐阜版いももちならではの特徴といえます。
佐渡から伝わった新潟県のいももち
新潟版いももちは、佐渡伝統の保存食がルーツにあります。タイプとしては高知版いももちに似ているのですが、もち米や米を使わないのが新潟版いももちの特徴です。
新潟版いももちのルーツである佐渡島は米がとれないため、主食として食べられていたさつまいもをメイン食材としています。この独特ないももちレシピが誕生したのは現在の佐渡市小木地区です。佐渡市小木地区は年間降水量が少ないため、稲作に適していません。
その代わり乾燥気味の土はさつまいも栽培に適しているため、さつまいもに小麦粉、砂糖、塩を加えてもち米のようについて作ります。
このように独特な方法で作られる佐渡発祥のいももちが新潟に伝わりレシピが広まったことで、新潟版いももちも佐渡のいももちレシピ同様、さつまいもをメインにしたいももちになっています。
なお昔は家庭で作る保存食でしたが、現在ではシンプルな味が楽しめるスイーツとして脚光を浴び、真空パック商品で全国発送している通販サイトもあります。
北海道風いももちのおすすめレシピ
北海道版いももちは、じゃがいもと片栗粉があればいつでも作れます。もち米を使わないのが北海道版の特徴ですから、マッシュしたじゃがいもをまんじゅうのような形にすれば完成です。じゃがいもの種類にこだわりはありません。
ただし家庭で作る場合には手頃な値段で手に入る男爵イモを使うことが多いです。「じゃがいもだけだとパサパサした感じがする」という場合は、片栗粉か小麦粉を少々加えてください。
量が多いと固い食感になりますが、少量であれば生地を滑らかにする効果があります。食べ方にもバリエーションがあるのが北海道版いももちの特徴です。定番は「焼く」ですが、「揚げる」もおすすめです。なお北海道では鍋料理にいももちを入れることもあります。
味付けは家庭によってさまざまです。甘辛いたれに付けるのもおいしいですし、ごまだれに付けて食べるのもおすすめです。じゃがいもが原料ですから、相性が良いバターとしょう油も人気があります。また具にチーズを入れるレシピも人気です。
和歌山県風いももちのおすすめレシピ
和歌山版いももちの元祖レシピは、蒸したもち米に蒸しさつまいもを混ぜてつきあげる、シンプルな「さつまいも餅」です。
さつまいもでかさましをするために誕生したのが和歌山版いももちの由来ですから、昔ながらの和歌山版いももちは「さつまいもが練りこまれたもち」といえます。ただし現在の和歌山版いももちは、スイーツ系いももちとして作られることが多いです。
もち米にさつまいもを練りこんでいるため、もち米だけよりもなめらかなのが食感のと特徴に挙げられます。またきな粉と相性が良い餡を具に入れるのも、現在の和歌山版いももちの特徴です。なお通常のもち米よりも柔らかいので、時間がたつと形が崩れることがあります。
そのため食べやすいように俵型にし、たっぷりのきな粉で全体をまぶすのが作り方のポイントです。地元では季節によって生地に旬食材を加えることもあります。中でもヨモギを加えた和歌山版いももちは、「後味が爽やか」と地元で人気です。
食べるタイミングは「出来立て」がおすすめです。時間がたって冷めると固くなりますが、その場合は表面を軽く焼けばおいしさが復活します。
高知県風いももちのおすすめレシピ
干しさつまいもを使う高知版いももちは、基本的に和歌山版いももちの作り方とほとんど同じです。炊いたもち米の中に、2cm~3cmサイズにカットした干しさつまいもをくわえ、しっかりと練りこんで生地を作ります。
干しさつまいもはカットしただけだとなかなかもち米に馴染まないので、電子レンジで約1分温めてから熱々のもち米に混ぜるのがおすすめです。
練りこむ際には砂糖に少量の塩を加えます。砂糖の量は使用する干しさつまいもの糖度によって調整してください。なおつきたてはかなりやわらかいですが、冷めると固まります。そのため固まる前に棒状に成形してください。
完全に冷ましたら食べやすい大きさにカットします。そのまま食べても問題はないのですが、オーブンで軽く焼いて食べる方がおいしいです。
岐阜県風いももちのおすすめレシピ
岐阜版いももちでは、いろいろな作り方ができます。ベースの生地は、ご飯と里芋を一緒に炊き込んで作ります。炊きあがったご飯と里芋はすりこぎ棒でお好みの硬さに潰してください。
粗めに潰すと主食系いももちになりますし、滑らかになるまですりつぶせばスイーツ系いももちの生地におすすめです。主食系いももちを作る場合は、丸く平たい形にしたいももちをフライパンで焼いてください。
味付けには、すりおろししょうがとしょう油を組み合わせたものを使います。両面が焼き上がったら事前に準備したたれに付け、再びフライパンで焼きます。
このように2度焼きにするとしょう油の香ばしさとしょうがの香りが食欲をそそる、おいしい岐阜版主食系いももちの完成です。
なおスイーツ系いももちにする場合は、少し厚めに成形してみましょう。餡をたっぷりトッピングしてぼたもち風にするのもおすすめですし、きな粉と黒蜜をたっぷりかける食べ方もおすすめです。
新潟県風いももちのおすすめレシピ
佐渡由来の新潟版いももちを作るなら、もち米を使わず小麦粉を使います。小麦粉を使うとさつまいもだけの生地よりもなめらかになるので、長期保存をしても食感が良くおいしいです。
蒸したさつまいもをすりこぎ棒でなめらかになるまですりつぶしたら、小麦粉を加えて全体に練り合わせます。味付けには砂糖と塩のみ使いますが、さつまいもの種類によって砂糖の量は調整してください。
調味料を加えてさらに練りこんだら、生地を棒状に成形し、ラップで全体を包んで冷蔵庫で一晩じっくりと冷やします。これで保存に適した佐渡由来の新潟版いももちの完成です。
食べる際には食べやすい大きさにカットし、オーブントースターやフライパンで両面に焼き色を付けて食べます。なお保存する場合は、焼いた新潟版いももちを1つずつラップに包んでから冷凍するのがおすすめです。
色々な種類のいももちを楽しんでみよう!
「いもを使う」という点では共通するいももちですが、いもの種類や具材、レシピなどでまったく違った味のいももちができます。
また地域によって食べ方が違うのもいももちの特徴で、餅のようにして食べるいももちもあれば、鍋に入れて食べるいももちもあり、食べ方次第でいろいろな味が楽しめるのもおすすめです。